教育関係の仕事を約20年やっていますが、その20年前と比べて不登校の生徒さんの数は確実に増えていると実感しています。
理由はさまざまですが、生徒さんや親御さんから聞いている不登校の理由は
・人間関係のトラブル(クラスメイト、部活の友達、部活の先輩や後輩、他校の生徒など)
・起立性調節障害などの病気
主にこの二つです。
時期もさまざまで、中学校に入学した最初から登校できなくなったり、それまで特に問題なかったのに中学3年生の夏休み以降引きこもってしまったりとあります。
親御さんから「うちの子学校に行けなくなってしまって・・・」とよくお話を聞くことがあります。
わたしはお医者さんでもカウンセラーでもないので、お子さんの状態を治すことはできませんが、先の事を考えたときに今どうしておいたらよいのか、というのをご提案させていただきたいと思います。
今は充電期間と捉えて。でも学習することは続けましょう。
学校はお休みしても構わないと思います。ただ、学校と密に連絡はとっておいたほうがいいでしょう。
もし本人が高校へ行きたい、と進路を考えたときにそれまでの状況を把握している先生がいたほうが、お子さんにとっても親御さんにとっても心強いと思うからです。
その上で、「学校に行かないとしても、ゆっくりでも学習は続けましょう」ということです。
①高校進学となると内申点が必須。内申点を稼いで選択肢を作るべき。
・提出物をきちんと出す
・定期テストをちゃんと受ける
この2つをしっかり行えば評定はつきます。
もちろん5段階評価の5、というわけにはいかないとは思いますが、それでも全く評定がつかないよりは全然マシです。
評定をできるだけ多く稼いで内申点を上げて、行ける高校の選択の幅を広げてあげてください。
そのため、当然学校の勉強が必要となってきます。
不登校のお子さんが、どうやって中学校の内容の勉強を進めていくのかいくつかご紹介します。
☆フリースクールに通う
フリースクールとは民間の教育機関で個人経営やNPO法人、またボランティア団体が運営しています。
主に不登校児やひきこもり、軽度の発達障害、身体障害、知的障害のお子さんが通っており、学校と違って一人ひとりのペースに合わせて学習内容を決めていきます。
運営母体 | 授業料 | 入学金 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
フリースクール | 個人経営 NPO法人 | 約33,000円 (月額) | 約53,000円 | ・スタッフや他の生徒との関わりを持つことができる ・個々のレベルに合わせて勉強を教えてくれる |
その施設にもよるとの事ですが、毎月33,000円は少し金銭的に高い気がしますね。ただ、勉強だけでなく色んな実習などの経験も積ませてくれるのであれば仕方ないのかな、という気もします。
フリースクールは出席扱いになるのか?
フリースクールに通って出席扱いになるかは、本来お子さんが在籍している学校の校長先生の判断によります。
フリースクールに通い、学校の提出物を出せるものは出し、定期テストも受けることができれば評定につながるということです。
高校進学を考えたら、出席日数は欠かせません。校長先生に確認をしておきましょう。
全国のフリースクールはこちらをご確認ください。(一部です)
☆家庭教師に来てもらう
とにかく勉強を進める、ということであれば家庭教師も一つの手段です。
お子さんの体調が優れなくて学校やフリースクールに通えなかったとしても、家庭教師なら自宅に来てくれるわけですから、「外出する」というプレッシャーを感じずに済みます。
また、時として親とは違った距離感でいろいろ話したり相談できたりと、お子さんが心の内をさらけ出すこともあると聞いています。
授業料(1時間) | 注意 | |
---|---|---|
センター | 1600円~3800円 | 教材費や交通費が加算されることもあります |
個人契約(プロ) | 2000円~6000円 | 学生の講師の場合、授業料は安くなります |
家庭教師の場合、学生講師であればお子さんとの年齢も近いため気楽に授業を受けられるというメリットもあります。しかし受験の知識などはあまりないケースも見受けられます。
プロの講師の場合、受験へのアドバイスの知識が豊富な方も多いですし、親御さんと年齢が近いのでいろいろお話が合うかもしれません。
無料体験を設けている業者もあるので、お子さんに合うのかなどいろいろ体験してみてから決めてもいいかと思います。
ただ、当然学校での出席扱いにならないのであくまで学校への提出物や定期テストを受けることの補助として考えたほうがいいのではないでしょうか。
☆塾に通う
少し外出しよう、という力があるのであれば学習塾もいい刺激になります。家に閉じこもらず、外部の人間と接することができるチャンスではあります。
集団塾・個別指導塾とありますが、お子さんのペースに合わせることができるのは個別指導塾なのでそちらでお話を進めていきますね。
授業料(月謝) | 時間 | 特徴 | |
---|---|---|---|
少人数形式 (1:2~3) | 週2回 約25,000円~ | 60分~90分 | 1人あたりにかかる時間は20~30分 |
マンツーマン (1:1) | 週2回 約35,000円~ | 60分~90分 | しっかり見てもらえる |
1:2~3の場合、お月謝が少し安くなることや、また他の生徒さんがいることで逆にプレッシャーにならずにすむ、ということがあります。(お子さんによってはあまり先生にずーっとそばにいられると落ち着かなることもあるようです)
ただ、一人ひとりにかけられる時間が単純計算で20分~30分なのでだいぶ短く感じますよね。料金も割高に感じるかもしれません。
1:1の完全マンツーマンの場合、しっかりお子さんのみを見てもらえるので安心ですね。お子さんも先生に質問しやすいかと思います。ですがその分料金は高くなります。
また、塾も学校と連携していないので、塾で学校に出す提出物や定期テストに向けて力をつけていく、と考えていいかと思います。
☆オンライン授業
今はフリースクールや塾などでオンライン授業を展開しています。
保護者の方の送迎が厳しかったり、お子さんが外に出る気持ちになれなくても在宅で受講することができます。
授業料の形態もさまざまですが、
オンライン授業 | 授業料(月謝) | 入会金 |
---|---|---|
フリースクール | 週1回 10,000円~ | そのスクールによる |
塾 | 週1回 10,000~など | 塾による |
となっており、コロナ禍ではこの在宅で受講できるのもありがたいですね。
どの手段をとるかはご家族で相談していただいて、とにかく勉強を少しづつ、ゆっくりでも続けてくれれば、と思います。
②高校進学は難しそう・・他にどんな勉強をさせればいいのか?
いずれ高校に、と願っていても実際通うのはお子さんです。
お子さんの体調または気持ち的にどうしても高校進学が難しそうとなった場合、どうすればいいのか悩みますよね。
今は在宅でも収入を得られる仕事が増えてきています。
基本的には高校受験を考えた5教科の勉強を進めていけばいいと思うのですが、趣味程度にでも将来役立つ資格の勉強を始めてみるのもありだと思います。
☆プログラミング
2020年から小学校でもプログラミングの授業が始まり、身近に感じる勉強ではないでしょうか。
プログラミングとは『コンピューターにやってもらう仕事を順番に書く作業』です。
アプリやゲームなどが作れるようになります。
最近はパソコンスクールや学習塾でもプログラミングを扱っているところもありますので、将来の道の幅を広げる上でも習わせてみてはいかがでしょうか。
☆パソコン基礎検定試験
正しいタイピング技術や入力の速度、表計算などの試験が行われます。
小学生・中学生の受験が可能です。
プログラミング含め、パソコンのスキルが当然にように要求されるので社会に出たときに困らない程度に知識を身につけておきましょう。
こちらで試験概要をご確認ください。
☆文章読解・作成能力検定
語彙・文法・資料分析・文章構成など8種類の項目で「伝わる文章」やコミュニケーション能力をレベルアップさせるための試験です。
仕事の打ち合わせなどメールでのやりとりを行なう中で文章の書き方というのはとても重要です。
また、ブログなどを行う際にも必要ですよね。
なかなか難しい文章読解や文章作成をぜひ勉強してみましょう。
こちらで試験概要をご確認ください。
☆家庭料理技能検定
小学生~社会人まで受験できるテストです。
正しい食の知識を身につけることができ、履歴書にも書ける資格です。
1級を取得すると料理教室が開校できるレベルの知識と料理技術を身につけたこととなり、指導者の立場に立つこともできます。
自分や家族のために食事を作って健康な体作りができるのは嬉しいですね。
こちらで試験概要をご確認ください。
いつか学校にいけるように受け皿を用意してください
Sくんの話~小4から不登校になったが中学2年生から行動が広がった~
20年近く前、FAX指導員を8年ほどやっていました。
FAX指導とは、生徒の家に週1回お電話をして1週間の勉強プランを立て、その計画表をFAXで送るというものです。
生徒たちはその計画に沿ってワークをやり、切り取ってFAXで送ってきます。
指導員たちはそれを採点・添削をして送り返す・・というものです。
そこでSくんという生徒さんを担当することになりました。当時中学2年生でしたが小学校4年生から学校にほとんど行けずにいるとのことでした。
何か言いたくなさそうだったので、不登校になった理由は聞いていません。
週に1回、Sくんと話して中学1年生の基本のページを計画に立てていました。Sくんと話したあとはお母さんともお話をします。お子さんの様子や学校から何か連絡はあったのかとかそんな話をしていました。
学校の先生からは、「出席日数がないのとほとんどテストを受けていないのでこのままだと地元で一番レベル的に入れるはずの某工業高校にも入れない」と言われてしまったとお母さんが悩んでいらっしゃいました。
そして、「このFAX指導もお金がかかってるから辞めたいと思うこともあるけど、子どものことを思うと辞めてしまったら外とのつながりが一切なくなるのは怖いし・・・」と不安を口にされていました。
そしてしばらく時が経ち、FAX指導部が年に3回行っている講習会のご案内のシーズンになりました。
FAX指導を受けている生徒さんは県内あちこちに住んでいますが、中心の都市の会場を借りて5日間集まって勉強をする、というものです。クラスはレベルごとにわけられ、普段電話で話している先生が実際に黒板の前に立って授業をします。
Sくんの住んでいる町から会場までは交通機関を使って1時間弱といったところです。半日会場で勉強し、帰宅するのにまた1時間。
Sくんの反応が気になるところでしたが、このまま勉強が理解できないまま1人で進めていてもモチベーションがあがらないだろうし、なにより会場にくるまでの色んな景色をみて他の学校の生徒さんたちをみて、いずれ受けるであろう受験というものの場慣れをしてほしかったのです。
お金も時間もかかりますが、Sくんとお母さんに講習会に来てみないかとお話をしました。
お母さんは本人次第でしたがSくんは最初少し拒否反応を示しました。
普段学校に行けてないのに、電車で1時間かけて1人で半日も勉強なんて・・と言っていました。
それはそうだよな・・と思い、まずは家族で話してみてね、と電話を切りました。
そして後日お返事を聞いたところ、「行ってみます」と言ってくれました!
講習会では、Sくんのとなりの席に他の先生が担当している元気な男の子のBくんが座るようにしてみました。
当日、Sくんに会いに行くと驚く光景が目に飛び込んできました。SくんとBくんが楽しくお話をしているのです!
Bくんは「なあなあ、Sさぁ~・・」と呼び捨てで楽しそうに話しかけています。Sくんもニコニコしながらいろいろと話しています。
とても二人が初対面とは思えないくらいで、むしろわたしが下手にその場にいないほうがいいのかな、と思うくらいでした。
後日、お電話をいれるとお母さんがとてもよろこんでいらっしゃいました。
1人で電車にのるのも初めて、大きな会場に行って勉強するのも初めてだったが仲の良いお友達ができてとても喜んで帰ってきたと。
その後、年に3回の講習会は毎回参加してくれて(隣の席は必ずBくんにしてくれ、という要望はありましたが)学校にも、保健室登校ではあるが行けるようになりました。
中学3年生になり、彼は進路先を新しくできる私立高校(単位制で週4日通学、とか週3日通学とか選べます)に決めました。
場所は、今まで講習会で使っていた最寄り駅と一緒のところです。つまり、自宅から1時間かかるところに決めたのです。
Sくんに「なんで自宅から遠い学校に決めたの?」と聞いたところ、
「講習会に長期休みごとに通ってたから、市内に行くのが全然怖いと思わなかったから。」と返事が返ってきました。
この一言は本当に嬉しかったです。講習会に声をかけたことで彼の進路の選択が広がったのですから。
お母さんからは「お金がかかりましたが笑、講習会に行かせて良かった」というお手紙もいただきました。
その後無事高校に合格、その後高校生は東京で講習会を行うのですが東京までも長期休みごとに通っていたそうです。
今、彼はもう30代半ばのはずですが元気にしているのかとても気になります。
勉強できる手段、外とつながる手段をとっておいてくれたからこそ、講習会に行くというきっかけが生まれました。
このことがあって不登校になったお子さんをもつ親御さんに「受け皿を用意しておいてください」といつも言っています。
まとめ
今や不登校児の数は全国で約130000人と年々増え続けています。(こちらをご確認ください)
親御さんにしてみればいろいろ不安なこともあるかと思いますが、まずは勉強する受け皿を用意していただいて、いずれ状況が良くなったときのための準備をお子さんのペースで負担にならない程度に用意しておくことをお勧めします。
前述のとおり、わたしのあくまで塾講師としての経験からの意見ですので、何か参考にになる部分がひとつでもあれば幸いです。
周りにも相談して、ご家族のみなさんにとって最善な方法が見つかることを願っています。
お読みいただきありがとうございました。
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